復路

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       ―Ⅳ―    船は12時頃リンシャ王国の東、ベガに着いた。 人数分、席の空いている店で昼食を摂り、すぐに出発する。 チタ共和国では雨は降っておらず、乾いた空気が一行を迎えた。 見覚えのある黄金色の畑と荒野の景色が続き、17時にカッツォルネに着く。 ジークは一行と同じ宿を取り、夕食を共にしたあと、談話室で様々な国の話をしてくれた。 「…これからどこに行くのですか?」 ミナに聞かれてジークは、数日はここに滞在するのですよと言った。 「ほかの者と情報交換して、アルシュファイドに持ち帰ってもらうのです」 「では、まだしばらく帰らないのですね」 ジークは笑顔で言った。 「私は今回、アルシュファイドを出てまだ数ヵ月なんですよ。1年は旅して回る予定です」 それはそれで大変だと思ったが、本人は平気そうだ。 「情報交換したら、また別の情報を得て動くんですか?」 「引き継ぎの内容次第ですね。何にせよ、東大陸を回ることになるでしょう」 東大陸は不穏な国が多い。 「気を付けて、くださいね」 ミナの言葉に、ジークはにこりと笑って応えた。 翌日、一行はジークに見送られてカッツォルネを発った。 黄金色の畑と荒野を1日中眺め、夕方、ようやくセムズ港に着いた。 夕日に照らされたバルタ クィナールを見て、一行はほっと息をつく。 荷物を積み込み、乗船すると、船長ライネスが笑顔で迎えてくれた。 「やあ、お帰り。今回も無事やり遂げたそうだね」 「ミナの、皆さんのお陰です」 サリの言葉に、ミナは困ったように笑う。 「サリがいなければできなかったことなんだよ?」 「でも、わたくしが結界構築できるように、下準備してくださったのはミナですし、構築時も導いていただきました。そして皆さんが守ってくださったのです」 「そうだね。みんながいてくれてよかった」 ライネスが言った。 「さあ、出港するよ。皆、(くつろ)ぎなさい。明日の朝にはアルシュファイドだ」 一行は笑みをこぼし、まもなく船は出港した。
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