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―Ⅴ―
夕食まで部屋で寛いだサリたちは、19時少し前に食堂に集まった。
「今回も困難な役目を果たし、無事帰還した君たちの成功を祝って」
乾杯、と杯を上げ、飲み干す。
立っていたライネスが座ると、めいめい食事を始めた。
「さて、聞かせてくれ。今回の旅はどうだった?」
ライネスに聞かれると、真っ先にサリが、旅の行程を順に話した。
チタ共和国の黄金色の広大な畑と荒野。
リンシャ王国の大きな船。
極彩色のイファハ王国。
そして水の張った霧の国、ザクォーネ王国。
出会った人々、ひとつひとつ違う町の様子、美しい景色の話もあれば、彩石騎士たちの活躍もあり、そして結界構築。
「ミナが結界の範囲を示してくれて、わたくしはその導きによって結界を張れたのですわ」
「結界石を目印にしたのかね?」
それだとザクォーネ王国の形は歪にならないだろうか、とライネスは危ぶんだが、口に出すのは控えた。
それに対応するべきはザクォーネ王国だろう。
「いいえ、違いますのよ。ミナの導きに従っていくと、人の石の力が感じられましたわ。ミナはそれよりもう少し範囲を広げて、ザクォーネの国土を決めてしまいましたの。わたくし、国境がどうなるか、まるで考えていませんでしたわ…」
サリは肩を落としてうなだれた。
ミナは困ったように笑う。
「サリでも、結界石を基点に範囲を広げることはできたはずだよ。それが普通は術者の限界だと思う。余計な力を使わせたね」
「いいんですわ!それでよかったのです。わたくし、お陰で全力でやれたと胸を張れますわ」
サリは一転、顔を上げて、言葉通り背筋を伸ばし、胸を張った。
ライネスは穏やかに笑ってふたりを見た。
だが内心、ミナの能力の範囲の広さに驚き、彼女の行く末を案じた。
「それで、イファハではよく休めたかね」
すると短い沈黙が流れた。
サリが言った。
「いろんなお店を見ましたわ。町の高い所をぐるりと周りましたの。そうしたら、綺麗で大きな噴水がありましたのよ」
「そうか、よかったね。ミナは?」
ライネスに聞かれてミナは視線を泳がせた。
「私も、いろんな店を見ました」
「判定しに行ったけどな、王城に」
アルに容赦なく暴露され、ミナは小さくなった。
「きょっ、許可は取りましたよ…、それに王城じゃないし。隣だし」
「ああ、でも、自由時間減ったよな」
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