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ライネスの言葉にデュッカは頷き、白々と明ける空を見た。
船は救命艇とともに動きだし、やがて起きてきた一行に事の次第を話した。
「ミナのお人好しが移った」
アルがじっとりとデュッカを見た。
ファイナは笑っているが、目が鋭く光っている。
ふたりとも、アークの負担を思ったが、それよりなにより、彼女も見捨てられなかっただろうと思った。
「拾っちまったもんはしょうがない。わかった、着くのは昼頃な」
そういうことで皆了解し、食事を摂った。
ビルデバラン共和国の者たちの食事は、船員が面倒を見ており、船を停めて、遊歩甲板から、食べ物の包みを救命艇に下ろしていた。
食事を渡し終えると船はまた動きだし、そのあとは何事もなく、昼前にエラ島に着いた。
救命艇は、軍艦用の桟橋に接岸し、ビルデバラン共和国の者たちはそちらで入国審査を受け、後ほど黒檀塔の桟橋から上陸するということだった。
サリたちは入国前広間で、1時間ほどバルタ クィナールの審査が終わるのを待ち、再び乗船した。
レテリム港まではあっという間で、サリたちは早めに荷物をまとめて、遊歩甲板に出た。
桟橋には懐かしい顔が並んでいて、互いに表情が判るまでになると手を振りあった。
接岸し、順番に梯子段を下りると、アークが最初に、サリに抱きついてきた。
「おかえり!」
抱きしめる腕の強さが、喜びの深さを伝える。
次にアークはミナの両腕を掴んで、下から睨み上げた。
「イファハでのこと、怒ってるんだからね!」
ミナは曖昧に笑って、ごめんなさい、と言った。
口先だけなんだから!と叫んで、アークは彩石騎士たちに気付き、走り寄ってアルとファイナの腕にしがみついた。
「おかえり!」
意外に熱烈な歓迎だったのでふたりは面食らい、一歩後方にいたカィンは、アークの感極まった表情を見て、微笑んだ。
「おかえり」
静かな声がして、カィンの頭に手が置かれる。
見なくても判る、伯父のロアだ。
少し顔を上げて、にこりと笑う。
「ただいま帰りました」
その言葉に、ロアはうん、と頷いた。
帰還の挨拶が済むと、荷物を馬車に積み込み終わった一行は、アークの前に集まった。
「長期にわたる務め、ご苦労でした。怪我もなく、無事に帰ってくれてありがとう。荷物を片付けたら、今日はもう休んでいいわ。朏の日まで3日間、休みとします」
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