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その瞬間、ようやく終わりを実感し、一行にはほっとした空気が流れた。
出迎えの家族たちは家に帰り、必要のある者は馬車に乗って王城へ。
ライネスも船を降り、王城へ向かう馬車のなかへ乗り込む。
ビルデバラン共和国の者たちを連れ帰ったことについて、話をしなければならない。
ライネスは馬車のなかで、同乗したデュッカに、ところで努力は実りそうかと聞いた。
デュッカは腕を組んで聞かぬふりだ。
「ビルデバランの者たちはこれからどうなるのですか」
聞きたくない話題なので、こちらも同乗しているセラムが話題を逸らす。
「ん、黒檀塔には宿泊施設があるからな。あれぐらいなら収容できるだろう」
セラムは、ああ、と思い出す。
士官学校の学生が、体験学習のために宿泊する場所のことだろう。
「だが、あれ以上となると受け入れられんだろう。噂を聞いて逃げ込まれるのも、ビルデバランに事が公になるのもまずい」
セラムは頷いて、アークの苦労を思った。
そのアークは、馬車のなかでミナに説教していた。
「まったく、能力を安売りするんじゃないわよ!」
「そうは言ってもあまりに容易いことで」
「その場所に出向いて行く行為はどうなの!反対勢力に見付かってたらただでは済まなかったでしょう!」
「あー、それはまあ…でもちゃんと護衛連れてましたし、逃げる準備も整ってました!」
「そんな苦労することないって言ってんの!」
アークは叫んで、こんなこと言いたいんじゃないのに、と頭を抱えた。
単純に無事を喜びたい。
「すみません…でもやっぱり、やってしまいます」
それを聞いてアークは、深い溜め息をついた。
そうして、まだミナには言っていなかった言葉を思い出した。
とにかく、帰ったのだ。
ここに、いるのだ。
「…おかえり、ミナ」
言われて、ミナはにっこり笑い、ただいま帰りました、と答えた。
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