これから

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盗んできたビルデバラン共和国の船は、少年兵たちが動かしていた。 「フレル港はチタの首都から遠く、ビルデバランに近いものね。港に近付いたら見付かっていたでしょう」 アークの言葉に頷き、ライネスは続けた。 「ビルデバランの軍艦は持ち込むと面倒なので置いてきた」 「分かった。ではとりあえず遭難者として保護するわ。身柄は黒檀塔で預かって」 シィンが頷く。 「そのあとはどうする」 ユラ-カグナが言い、アークは考えながら口を開いた。 「メノウと交渉して、まだ片付けていない仮設の建物を彼らの住まいとしてもらう」 思いがけない対策に、ユラ-カグナは驚いたようだった。 「…今後はどうする」 今後…また同じようにビルデバラン共和国から逃げる者がいたら。 すべてをメノウ王国に押し付けるわけにはいかないだろう。 だがアークは言った。 「すべてをメノウに集めるつもりよ。メノウの国民は、復興のための技術を覚えたそうだけど、人手は必要だと伯母さまが仰っていたわ。騎士を引き上げて、ビルデバランの者たちを働き手とする」 アークの伯母…前政王ネイラシェント・クィン・レグナ。 現在、メノウにいて、復興を中心にメノウ国王の手伝いをしている。 ユラ-カグナは顎に手をやって考える。 メノウ王国にとって、ビルデバランの民を受け入れることは、それほど容易なことだろうか? 「…分かった。交渉してみよう」 やってみなければ判らない。 「さてと、じゃあ今度はザクォーネの方ね。さっき言ったように、サーシャとビルデバランからあまり好意的でない書簡が届いたけど、それだけよ。リクトとカラザール、ほかの国も沈黙してる」 息をついて、アークは続けた。 「結界の保持期間は、500年から1000年ということなので、まず正しい結界石の選び方を教えて、その方法を失わないように、今後付き合いを深めていく…これはカザフィスと同じね」 違うのは、付き合い方だ。 「今回の遠征に対する、ザクォーネとの取引の品は、ツェリンスィアから作られた薬。これは既に持ち帰ってもらっているわね」 カィンが、はい、と答える。 「結界石の選び方を教える対価は、ツェリンスィアの薬の供給、そして薬の共同研究による成果の共有とする予定」 アークは執務机のなかから、紙片を取り出し、そこに書かれた文字を追う。
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