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―Ⅵ―
ステュウは酒場の噂話に耳を傾けていた。
イファハ王国の王城内の動き。
ザクォーネ王国のファランツで多い子供の失踪。
リクト王国の軍の動き。
「ミナたち、今頃船でなにしてるんだろ」
ゼノが言い、ステュウは集中を乱された。
「食事中じゃないか」
ラシャが答え、取り皿に肉を取る。
3人は、ミナたち旅の本体から先行して、今はリンシャ王国にいる。
「それか噂されてるかもな。俺たちこそどこにいるか」
「まだザクォーネにも入ってないのに…」
「仕方ない。いつもこんな感じか?」
ラシャに聞かれ、ステュウは頷いた。
「セルズ入りも遅かった。今回は町の姿を覚え直す方が重要だったろう」
ゼノとラシャは、ザクォーネ王国出身者だ。
それもあり、先行…旅の本体より先に現地入りする役目に名乗りをあげた。
今回、ふたりは、ザクォーネ王国内で使われる3艘の船で分かれて乗り、不測の事態に動きやすいよう、それぞれの船を導く役目だ。
ふたりがザクォーネ王国を出たのは10年以上前であるため、まずは記憶の更新が必要なのだ。
「明後日にはザクォーネに入れる。とにかく食べておけ」
ふたりは頷き、食事を進めた。
ステュウは再び酒場の声から、役に立ちそうな話題を拾っていく。
そのなかに、緊張感はないようだ。
それが表れるのは、ミナたちが何をしに来たか、知れる頃だろう。
2日後の合流に向け、注意深く話を拾っておかなければ。
そう気持ちを新たにして、ステュウも食事に手を伸ばした。
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