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セラムはまだ何か言いたそうだったが、ムトに連れられて部屋を出た。
ミナは中央の低い机に人数分の土産を置くと、隣室への扉からなかに入って、控えていた小間使いたちに、騎士団用の菓子と彼女たちへの土産を渡した。
「騎士団の皆さんへのお土産、何にしたんですの?」
部屋を出てからサリが聞く。
包まれていたので中身は判らなかったのだ。
「彩石箱だよ。みんな自分の部屋にはあるだろうけど、ここにもあると便利かなって思って」
「良さそうですわ。わたくし、ひとりひとり違うものにしましたわ。喜んでもらえるでしょうか…」
「お土産ってちょっと不安だよね。気に入ってもらえるかどうかって」
話しながら王城書庫管理官室のテオを訪ねる。
ふたりに会ったテオは、両手を広げて喜んだ。
「やあ、ふたりとも無事だね!心配してたんだよ」
「何事もなかったですよ。これ、お土産です」
ミナに渡された品を見て、テオは言った。
「これは…陶磁器じゃないよね?原料は何なの?」
それは飲み物用の器と、その受け皿だった。
「メグスです。ほかにもいろんな加工品がありましたよ。今回のお土産はほぼメグスです」
にっこり笑ってミナが言う。
「メグスってあれかい、草の…へえ、加工品が色々あるって聞いてたけど、こういうものだったのか…」
「軟らかいものから硬いもの、薄いものから厚みのあるものまで、色々でしたよ。収集官の方々に写真でも撮ってきてもらうといいかもしれませんね。興味があったら、お土産をみんなに見せてもらってください」
「うん、そうさせてもらうよ」
「それから私たち、ジークさんに会いましたよ。ジーク・マロウさん」
「おや、どこでだね」
「リンシャの船のなかでしたわ。たくさんお話を聞かせていただきました」
サリの笑顔に、テオはよい出会いだったのだなと思う。
「カッツォルネまで一緒に行って別れました。ほかの方と情報交換なさるとか」
ミナがそう言い、テオは頷いた。
「ああ、じゃあもうすぐ彼の話も聞けるんだな。とにかくふたりとも、無事でよかった」
「はい。ありがとうございます。それではこれで」
「お土産ありがとう」
ふたりと別れたテオは、急いで器を机に置くと、宰相執務室へと走った。
部屋に入って荒い息を吐くテオに、ユラ-カグナは何事かと眉根を寄せた。
「土産!ミナからの土産何だった!?」
「これだ、書類整理にちょうどいい」
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