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帰り道
サリとミナは王城書庫管理官室から、自分たちの居室に戻っていた。
サリはよごれ物を小間使いに預け、荷物を整理し直す。
今度の旅はレシェルス区だ。
森林地帯だという話だが、服装に気を使う必要はないだろうか?
サリはミナに相談したくなったが、これぐらいのことは自分で考えなければだめだと頭を振った。
取り敢えず、水気を弾く外套や合羽は必要ないだろうと外に出す。
それ以外のものは、迷ったが入れたままにしておく。
そうして取り敢えず荷物の整理がつくと、今度は残った土産に向き直る。
両親と姉とイズラには会うから、ファラとロアの分だけ置いていけばいい。
サリは土産袋をふたつに分けて、片方を持つと居室を出た。
歩きながら、そういえばひとりは久し振りだなと思う。
王城を出て、家に向かった。
見慣れた景色だけれど、なんだか気持ちがふわふわして、ここにいる実感がない。
黄色の並木道をゆっくり歩くと、足元の落ち葉が、かさりかさりと音を立てる。
その音がなんだか嬉しい。
嬉しさがくすぐったくて、口元に笑みがのぼる。
異国での緊張感から解放されて、サリは、自分を取り戻したようだった。
いくつかの落ち葉が舞い落ちる。
立ち止まってその動きを見ていたサリは、前を向いて、家路をのんびり歩いていった。
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