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―Ⅶ―
翌朝の天気は穏やかで、ミナは遊歩甲板に出て大きく息を吸い込んだ。
陸は荒れ地が多かったが、点在する町の存在が、生活する人々がいることを教えてくれる。
船の速度は落ちていて、目的地が近いのだろうなと思わせる。
階段を降りて、船体中央の展望室に入ると、椅子に座って流れる景色を眺めやる。
今は6時で、騎士たちは、鍛練場にいるらしかった。
「おはようございます、ミナ。ほかの方々は起きておられるのでしょうか?」
しばらくすると、サリが展望室に入ってきて言った。
「みんな鍛練場みたいだよ。ゆうべはよく眠れた?」
「何度か起きてしまいましたの。でも休めたと思いますわ」
座りながら答えるサリに頷いて、ミナは陸地に目を向けた。
「もうすぐだね」
「はい」
「どんな景色があるのかな」
「景色…ですか?」
サリが聞き返すとミナは、うん、と頷いた。
「アークたちにどんな土産話ができるかって、重要じゃない?」
いたずらっぽく瞳をきらめかせるミナを、サリは、ぱちぱちと何度か瞬きして見た。
「まあ、わたくし、そんなこと考えてもみませんでしたわ。報告ではなくて土産話なんですの」
ミナは頷いた。
「報告は毎日するよ。それとは別に、どんなことを見て感じたかって、話したいじゃない?」
サリは帰ったときのことを思い描いてみた。
確かに、きっといっぱい話したいに違いない。
サリは両手を合わせて、瞳を輝かせた。
「わたくし、たくさん見て覚えますわ!」
ミナは笑顔でサリを見た。
「伝えられるといいね」
「ええ、本当に!」
それからしばらく、残してきた者たちの話をして、7時に食堂へ。
食事を済ませると、各自部屋に戻って支度をする。
時間がくると、サリの荷物はスエイドが、ミナの荷物はパリスが持ち、遊歩甲板に出て接岸を待った。
やがてもやい綱が渡され、船は接岸して梯子段が固定され、下船の準備が整う。
「では気を付けていきなさい」
ライネスが甲板に立つ皆を見回して言った。
全員が頷き、まずはアニースとスティンが船を降り、それから、セラム、パリス、イルマ、ミナ、デュッカと続く。
一行は船着き場に立つと、手配した馬車や馬を確かめ、荷物を船から下ろし、積み込む。
「ミナ、サリ。馬車に乗ってくれ」
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