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旅の一行
―Ⅰ―
世界にただひとつの、黒土から成る大陸。
そのほぼ中央に位置するアルシュファイド王国を治めるのは、若き双王だ。
その1人である政王、アークシエラ・ローグ・レグナは、体を寝台の上で起き上がらせ、しばらくぼうっとしていた。
一方で、了解してもいた。
今日はアークシエラ…アークの大切な人たちが、危険な旅へ出発する日だ。
ふと、視線を落として、考える。
行かないでと言ったら…。
アークは首を横に振った。
それは自分が一番望まないことだ。
アークは、ぱんっ、と音を鳴らして、頬を叩いた。
元気でいよう、と思った。
そうでなければ、自分らしくない。
寝台から滑り降りて、ひとつひとつ身支度を整えていく。
きっちり髪をまとめあげ、一連の作業が終わると、最後の仕上げに姿見の前でくるりと、ひと回りする。
それから、食事室に入ると、既にサリとアルとファイナが居て、朝の挨拶を交わした。
「ゆうべはよく眠れた?」
サリに聞くと、はい、と気持ちのよい返事。
本当によく眠れたようだ。
サリたちは今日、大陸の東にあるザクォーネ王国に向けて旅立つ。
それというのも、ある依頼を受けたためだ。
ザクォーネ王国という国は、東をリクト王国、西をカラザール王国に挟まれて、長年、いがみ合う両国の戦に翻弄されてきた。
その戦から逃れるため、異能のひとつである、水の力を使った絶縁結界構築をしたいというのが、当国の願いだ。
そのため、アルシュファイド王国は、結界構築に必要な術者の貸与と、結界構築に際して必要な彩石(さいしゃく)の判定と、それらを無事終えるための軍事的圧力展開を依頼された。
アルシュファイド王国に、たいした益はない。
だが、すがる手を、アークは受け止めた。
そして今日、その依頼を果たすための旅に出るのが、今ここに居る3人、水の側宮(そばみや)サリ・ハラ・ユヅリ。
彩石騎士アル…アルペジオ・ルーペン。
同じく彩石騎士ファイナ・ウォリス・ザカィア・リル・ウェズラ。
さらに、彩石騎士でここにはいないカィン・ロルト・クル・セスティオ。
彩石判定師ミナ・ハイデル。
風の宮公デュッカ…デュッセネ・イエヤ。
側宮護衛団の6人と、ハイデル騎士団の11人。
合計23人を送り出す。
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