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そう言われてミナは、びょくっ、と身動きして、もう一度、気を付けます…と呟いた。
サリの方は、家族に別れを言っており、その傍らでミナは、火の宮公カヌン・ファラとも挨拶を交わした。
それが終わるとミナは、ひとり後ろに下がる、シェイドの妻、ミスエル・カミナ・レントのもとへ行った。
「落ち着かなくてごめんなさい。またひと月以上も…」
申し訳なく思い、そう言うミナに、ミスエルは首を横に振ってみせた。
「どうか気に病まないでください。シェイディクを必要としてくれることが、私、嬉しいんです」
ミナは、その言葉に深い愛情を感じて、にこりと笑った。
それから、荷物の積み込みにあたるシェイドの視線を捕まえて、ミスエルのもとへ呼ぶと、短い時間ながら、しばらくふたりにさせる。
その様子に微笑みを向け、ミナは、サリの家族と挨拶を交わした。
サリの姉である水の宮公カリ・エネ・ユヅリと、その婚約者イズラ・イル・ネハナ。
母のカルトラ・ナ・ユヅリと、父サムナ・ハク・ユヅリだ。
やがて荷物が積み終わり、一行は梯子段を上って船上へ。
離岸する様子を見つつ、サリとミナは港に残る者たちに手を振った。
やがて彼らが船上から見分けられなくなると、バルタ クィナール船長、ライネス…ライネスオリオ・ボゥワークと再会を喜んだ。
「すぐに出国審査だ。準備して待ちなさい」
そう言われて、サリとミナはあてがわれた部屋で荷物を整理すると、彩石をすべて持ち、エラ島上陸を待つ。
エラ島では、出入国審査が行われており、このとき厳しく制限されるのが、彩石の持ち運びだ。
彩石とは、この大陸の人すべてが持つ、異能と呼ばれる能力の発動を助けるものだ。
使い方によっては他者を傷付けるので、犯罪抑止のためと、彩石の流通を操作するため、出入国時に制限をかけている。
だが今回、一行の目的は国家命令によるもの。
きちんとした手順を踏めば、持ち運びに一切制限は受けない。
一行は、異国の者であるザハリラを除き、全員が無審査で出国門を通り、出国前広間で1時間ほど、船の審査が終わるのを待った。
やがてバルタ クィナール乗船許可が出され、一行は再び船に乗り込む。
「ようやく始まる気がするね」
ミナの言葉に、サリは頷く。
いったい、この旅にどんな事柄が待ち受けているのか。
サリは徐々に高鳴る鼓動を抑えるように、胸元でぎゅっと両手を握った。
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