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「……美味しい……」
ほんとに、本当に、すっごく。
温かさが、甘さが、染み渡って、ほっこりと優しい気持ちになるような味。
食べた物が、私を作っていくんだと実感するような。
腕を組んで私が食べる様子を見ていた隆ちゃんが言った。
「それ、お前のとこの米。」
「え。うちの?」
手にしている茶碗に目を落とす。
こんなに美味しかったっけ。
お米だけは炊いてたけど、こんな味だったっけ……
切らすことなく送られて来ていつでも身近にあったうちのお米。ずっと食べてきた筈の味を、今日初めて認識したように思う。
「ご両親が、すごい心配してたぞ」
「……」
ふと、考える。両親は、なんで病院じゃなくてここに私を連れて来たんだろう?
「娘をヨロシクってさ」
「へ? あ……初日に来たときに?」
やっぱり両親と隆ちゃんの間で何かしら話はあったんだ。
「永久就職でも構いませんって言われたんだけど、どう思う?」
隆ちゃんはちょっとだけ意地悪そうにニヤリと口角を上げた。
その仕草は小学生時代、私にイタズラを仕掛けた時の顔によく似ていた。
「……」
は?…… 就職?
「いや。むり……無理無理無理!! 出家とか、全然無理だから!!」
悟りが開けそうだとは言ったけれど!
私が驚いて必死に否定すると、隆ちゃんは
「冗談だし。つか、意味全然通じてねーし」と面白くなさそうに言った。
「ま、とりあえずお前、来月まではここに居るように話がついてるから」
「は?! 来月?! このプログラムが終わったら帰れるんじゃないの?!!」
「そんな簡単な訳ないだろ? 俺が直々にビシバシしごいてやるから」
不穏な台詞に、私は持っていたレンゲを取り落とした。
「精進しろよ、米子」
「そ、そんな……」
私の修行の日々は、
まだまだ終わらない。
……らしい。
チーーーーーーン……
合掌。
精進☆ガール END
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