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畑で収穫したきゅうりを丁寧にカゴヘ入れる。
森丸寺に来てからきゅうりは私のNo.1フェイバリットフードと言っても過言ではない。なぜって、きゅうりの糠漬けがここで一番味の濃いものだから。
それに合わせる主食がモソモソの玄米というのが惜しいけど、とにかくもう薄い味付けにはうんざりなのだ。
私がブチブチと腐りながら作業をしていると、後ろでは女子大生5人組がキャッキャしながら実に楽しそうだ。
……チッ
聞こえてくる声の、その浮かれた内容に内心舌打ちをする。
「隆信さんめっちゃ格好いいよねぇ」
「あたし隆信さんだったら彼氏と別れてもいいかもぉ」
まんまと騙されて……隆ちゃんなんて外面が服着て歩いてるような奴なんだからね!
「分かるー! しかもこの寺の跡取りなら何気に将来玉の輿じゃん」
「それにさ、ここの生活も案外悪くないっていうか……2泊しただけなのに肌の調子とかめっちゃ良くない?」
観光気分でたった2泊しただけで、ここの生活の厳しさが分かるか!
「夕方帰らなきゃいけないのがなんか残念なくらいだよね」
なんなら代わってくれよ!!
こっちは期限未定で強制収容だよ!!
それにあれでしょ、なんだかんだ言いつつ今日の夜、焼き肉とか行くんでしょ!!
『修行おつかれ☆うぇーい☆☆』とか言って飲みに行くんでしょ!!
「うぅー……」
ずるい……ずるいよ!!!
私が羨ましさと妬ましさと被害妄想で唸っていると、その声が聞こえたのか女子大生が話しかけてきた。
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