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帰京の夢は叶わず、私は大広間の真ん中で小一時間ほど正座をしている。……不本意ながら。
女子大生5人組は私を残し、満足感&充実感たっぷりで「来年もまた来たい」と言って爽やかに帰っていった。
脱走計画がバレて隆ちゃんが怒っているのは確実で、ここに座ってろと言われてその通りにしているのに命じた本人がなかなか戻ってこない。
しびれた足を崩したいけれど、崩した瞬間に隆ちゃんが戻って来る予感がしてプルプルしながらも崩せないでいる。
すーっとふすまが開いて、無表情の隆ちゃんが現れる。
「ん」
一音だけ発声した隆ちゃんは私に一枚の紙を差し出した。
「……なにこれ」
「今後の米子のスケジュール」
渡された紙には達筆な筆文字でこう書かれている。
『断食プログラム』
そのタイトルの下には合計9日間の全く気の進まない予定が書き連ねられている。
「明日から始めるから」
隆ちゃんは有無を言わさぬ声色で私に告げた。
私はまるで死刑を宣告されたような絶望感に打ちのめされた。
あまりにも悲壮な顔をしている私に仏心を出したのか、最後に隆ちゃんは
「本断食の3日間が終わったら、この世で一番旨いものを食べさせてやるよ」と言った。
本断食と呼ばれる、9日のうちの真ん中の3日間は、3食全てが人参とりんごのジュースのみという死ねる内容だった。
「むり……」
「俺も一緒にやってやるから大丈夫だ」
この1週間ですでに我慢の限界を越えていて、さらにこれから断食なんてとても耐えられそうにない。
「無理無理無理! ってゆーか、もう帰る! 絶対帰る! 」
私は駄々をこねる子供のようにイヤイヤを繰り返した。
「舞子、よく聞け。」
その態度に当然隆ちゃんはキレると思っていたのに、真剣な顔で私の肩を両手で掴み、諭すように言った。
「お前は、中毒になっている」
「は……? 中毒って……なに言って……」
隆ちゃんは決して嘘を吐いている様でも、からかっている様でもなかったけど、私はすぐには何を言われているか分からなかった。
「ジャンクフード中毒だ」
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