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水嶋課長は居酒屋で部下と楽しくお酒を飲むタイプじゃない。 どちらかと言えば、綺麗なお姉さんがいる店やホテルのバーで寡黙にグラスを傾けているイメージだ。 早瀬が課長を誘ったのは、私のあの告白があったからとわかっているけれど……。 恨めしい気持ちでチラリと早瀬をみると、腹立たしいほどのどや顔をしていた。 「俺か?」 「はい。予定がなければ」 俯いて、水嶋課長に「断って」と念を送る。 そんなことはしなくても、きっと水嶋課長は来ないはず……。 だいたい三人で飲みにいっても、仕事以外で話すことなんてないし、何より 早瀬が何か企んでいそうで嫌だった。 それなのに。 「そうだな、たまには」 ……嘘でしょ。 唖然とする私を他所に、水嶋課長の返事を聞いた早瀬はスマホでお店検索を始めた。
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