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「お前にはさ、一番に報告しようと思っていたんだ」
私を居酒屋に誘った早瀬は、ビールで乾杯したあと、真っ先にそう告げた。
照れたように目を伏せるその表情をみたとき、心臓がぎくりと嫌な音を立てた。
こんな日がいつかくるかもしれないと思っていたけれど、まさか突然その日がやってくるなんて。
早瀬、やっぱりそうなの?
嘘だと思いたいけれど、早瀬は落ち着かない様子でビールをゴクゴクと飲み干していく。
その頬はほんのりと赤い。
嫌だ。聞きたくない。
でも……。
私は覚悟を決めるように、そっと息を吐き出した。
「あらたまって、なに?」
本当はわかっていたけれど、先を促すように早瀬に視線を送る。
すると、早瀬は「実は……」と言いにくそうに口を開いた。
「俺、結婚することになったんだ」
「……」
早瀬の真剣な声のトーンに視界がぐらりと揺れた気がした。
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