746人が本棚に入れています
本棚に追加
……どうして?
そんな素振りは微塵もなかったじゃない。
早瀬の言葉を信じて、待っていたわけじゃない。
だけど、いつの間にか早瀬も私と同じ気持ちかもしれないと、自分に都合のよい解釈をしてしまっていた。
こんなことになるなら、気持ちを伝えればよかった。
同僚で友達という関係が私の気持ちを縛り付け、一歩踏み出す勇気が持てなかった。
そして、早瀬のあの言葉。
「黙ってないで、なんとか言えよ」
早瀬に見詰められ、慌てた私は早口でまくし立てた。
「か、彼女がいるとか聞いたことなかったのに、びっくりするじゃない。決まった人がいるならもっと早く教えてよね、まったく」
どうか気づかないで。
ぎこちなく笑う私をどうか受け流して。
相手の女性は高校の同級生だと早瀬は言った。
去年、同窓会で再会して、やけぼっくいに火が付いたのだとか。
そんな話を聞かされれば、私と知り合う前から、彼女と出会っていたと諦めるしかないのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!