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水嶋課長とは、半年前に赴任してきた私たちの直属の上司だ。 年齢は確か、32ぐらいだったと思う。 着任してすぐに、その端正な顔立ちとクールな雰囲気で瞬く間に女子社員の憧れの的となった。 しかも独身で恋人なしとくれば、恋愛の対象としてみられても仕方がないだろう。 けれど、課長は誰にも靡かないのだ。 アプローチを試みて玉砕されたのは、ひとりやふたりじゃない。 高嶺の花だともてはやされている秘書課の瞳さんが、冷たくあしらわれたというのは有名な話だ。 「そりゃ難しいな……」 「うん」 なぜ水嶋課長の名前を口にしたのか、自分でもわからない。 ただ、ふと頭に浮かんだのが水嶋課長だったのだ。 「でも、可能性はゼロじゃないだろ?」 「まぁ、そうだけど、下手に告白して仕事で気まずくなるのも嫌だし……」 「俺は応援するぞ?」 「いいって。そっとしておいて」
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