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もうこの話題を切り替えようと、わざと明るい声を出す。 「そういえば、早瀬この前のプレゼンのとき、間違って修正前の資料持っていったでしょ?」 すると、早瀬は「うわ、それ言うなよ」とちょっとむくれた顔をして私を軽く睨むと、それから「お前のフォローで助かったよ。サンキュ」と目を細めて屈託なく笑った。 「……」 もう、やめてよ。 その笑顔に胸が締め付けられて苦しくなる。 一番近くにいると思っていたけれど、それは私の思い違いだった。 「永野?」 「……まだ食べるでしょ?何か追加オーダーしてもいい?」 「ああ、任せる」 「何にしよう。おすすめから一品とあとは……」 メニューを手に取って早瀬から逃げるように顔を隠した。 わかってる。 これからは、いやこれからも、私は早瀬のよき同僚でいるしかないのだろう。 そして、伝えられなかったこの想いは、胸の奥で消えて無くなるその日まで留めておくと心に決めた。 早瀬の告白を聞いてから、二週間が過ぎた。 私はあのとき水嶋課長の名前を出したことも、すっかり忘れていた。
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