異端者

2/19
前へ
/25ページ
次へ
 傷口を冷やす風が吹いた。血が冷たく感じる。今日はこんなに冷える日だったろうか。  空は黒く塗りつぶされている。いつの間にか夜になってしまった。土の上に寝転がりながら天を眺める俺の姿は、傍から見ればきっと寝ているだけにしか見えないのだろう。いや、血を確認できれば死体と思われるかもしれない。  鼻血を拭い、切れた唇も摩った。痛みが走る。随分痛めつけられたものだ。俺はただ、教室の隅でじめじめと生きているだけだろう。それが気に入らないのか? それでも殴られるほど悪いことじゃないだろうに。  ああ、痛い。もう少し寝ていよう。どうせ家に帰ったところで心配もされない。空が近く感じるなあ。そっちに逝けば楽になるのだろうか。なあ、兄さん、俺もそっちに逝っちゃダメかなあ。  なんて、阿呆なことを考えても仕方ない。死んだ先に天国はあるのだろうか。ないのなら、代わりにあるのは――なんだろうな。  明日も同じようになにかしらされるのだろうか。あいつらは気分屋だからな。まあ、いじめというのと少し違うことは分かっているが、これが毎日では体が持たない。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加