DOLL

あれから一か月経った。

今夜には、発注を終えた私の人形が出来上がる。

一か月の間に、娘のマリカと仲良くなれたら人形を購入するのはやめようとずっと思って来た。

けれどマリカの攻撃は弱まることはなく、学校や近所に「新しいパパ大っ嫌い！」と宣言しまくる有様だ。

それでも母親に離婚を迫ったり、前のパパの所へ行きたいなどと言う事はなかった。

あの家は気に入っているようだし、私だけあの家から消してしまいたいのかもしれない。

思春期に近づこうとしている女の子特有の、一時的な反応なのだと自分を納得させるのだが、自分の家なのに居場所がなく、愛してやりたい気持ちはいつしか苦痛に変わり、日を追うごとに心が萎んで行った。

どうしようもなく辛く、逃げ出したい気持ちになるたびに、私はあの夜サナから貰ったメモをコッソリ眺めた。

『写真と一緒に、その娘の髪の毛を一本送ってください。
それを混ぜ込んで出来上がった人形は、その娘のダミー人形。

満月の夜、その人形に愛をささやくと、本体の娘はこの世から消え去ります。

そして代わりにその人形が、あなたの娘として生を受け、世間から認知され、従順な娘として、あなたに寄り添うでしょう』