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その夜私は仕事を終え、いったん自宅に戻ってから、車で『人形の家』を訪れた。
大事な人形を迎えるのだ。
店の入り口で、店長とサナが丁重にお辞儀をして私を出迎えてくれた。
そして店の中央の椅子には、あどけない表情の少女人形が座っていた。
柔らかな陽だまり色のワンピースを着て、透き通る琥珀の瞳が、私を見つめる。
マリカにそっくりな顔立ちなのに、『無垢』というのはこの子のためにあるのか、と思えるほどの穏やかなまなざしが私を包み込む。
私は思わず涙を流していた。
ああ、この子を私は家に連れて帰ろう。
私が見たかったのは、こんな娘の表情なのだ。
泣き崩れ、少女の膝に顔をうずめた私の肩に、サナの柔らかな手がそっと置かれた。
「どうぞ、大切にしてあげてくださいね……」
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