DOLL

12/14
前へ
/14ページ
次へ
その夜私は仕事を終え、いったん自宅に戻ってから、車で『人形の家』を訪れた。 大事な人形を迎えるのだ。 店の入り口で、店長とサナが丁重にお辞儀をして私を出迎えてくれた。 そして店の中央の椅子には、あどけない表情の少女人形が座っていた。 柔らかな陽だまり色のワンピースを着て、透き通る琥珀の瞳が、私を見つめる。 マリカにそっくりな顔立ちなのに、『無垢』というのはこの子のためにあるのか、と思えるほどの穏やかなまなざしが私を包み込む。 私は思わず涙を流していた。 ああ、この子を私は家に連れて帰ろう。 私が見たかったのは、こんな娘の表情なのだ。 泣き崩れ、少女の膝に顔をうずめた私の肩に、サナの柔らかな手がそっと置かれた。 「どうぞ、大切にしてあげてくださいね……」           ***
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加