DOLL

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その客が、しっかりと人形を抱えて店を出て行くの見送った後、サナは人形を座らせていた椅子にふわりと座った。 レジを閉じ、店の掃除をし始める店長の柊聖人をじっと見る。 「ひとつ売れてよかったね」 聖人は小さくため息を吐き、体を起こした。 「メモを渡したんだね。あまり正当なやり方だとは思えないけどな。あんな方法」 「あら、嘘を言ってる訳じゃないし、人形の覚醒を促した訳でもないわ。そんな“方法”もある、って教えてあげただけだもん」 「サナは人の弱みに付け込み過ぎるよ。もっと人間らしい心をもって商売しようよ」 「あら、人形じみてる?」 ニヤッと笑うサナを、少し憂いた表情で聖人は見つめる。けれど何も言い返せない。 「でも、なんであのおじさん、娘の髪の毛を送って来なかったのかな。『提案は、見合わせることにします』ってメモが入ってた。私なら絶対に純真無垢な娘の方がいいと思うけどな」 聖人は笑う。 「ギリギリまで悩んでたって顔してたけどね。 それでもあの人は、自分の力で父親になろうとしたんじゃないかな。気づいたんだよ。そうやって純真な娘を手に入れても、空しさが残るって。あの人のそんな優しさは、きっといつかマリカちゃんにも伝わるよ。 それまでは、あのドールに、そっと癒してもらえるように念を込めておいた」 「う~ん、なんだか人間って面倒くさいよね。私だったら、純真で従順な魂を持った人形たちと一緒に暮らしたいと思うんだけど」 「サナはいつになったら人間の心が分かるのかな」
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