DOLL

7/14
前へ
/14ページ
次へ
「そうだ、ちょうど今朝完成して、服を着せようと思っていた子がいるんですが、ご覧になりますか? 隣の作業部屋にあるんですが」 特に見たかったわけではないが、そこで断るのも妙な雰囲気だったので、私は案内してもらう事にした。 ドアを隔てた隣の作業部屋は店舗よりも広く、6畳くらいだろうか。 陶芸家のアトリエのように、石膏や粘土の袋、工具、そして棚にはいくつかの人形の頭部の原型が並んでいる。 けれどそんなものが目に入ってきたのはもっと後だ。 私の目は中央の作業台の、生まれたての人形の裸体に釘付けになった。 薄暗い部屋の机に寝かせられた少女人形は、これから手術されるのを素直に待ってでもいるように健気で、思わず私は自分の上着を掛けてあげたい衝動にかられた。 作業台の横に立っていたサナが、私をそっと手招きする。 もっとよく見てくれとせがむように。 吸い寄せられるように私は近づき、腹を机に押し付けるようにして、その人形を間近で見つめた。 首から下の鎖骨も人形とは思えないほどリアルで、その下の胸板にも、華奢な子独特の骨の影が浮いている。 その下には、まだ脂肪のついていない10歳くらいの乳房があり、先端部はほんのり淡い桃色に色付けされている。 腹もへそも、まるで本物の幼児で型を取ったかのように忠実に再現され、驚いたことに股間までも精巧に作られていた。 私は人形相手に目のやり場を失くし、少しばかり狼狽えた。 その気配を感じたのか、サナはその人形によく似た眼差で、無表情に私を見上げてくる。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加