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「どうせ服を着せてしまうのに、かなり精巧に作られているんですね。ここの人形たちは」
間が持たないと感じた私は、店長の柊にそう質問をしてみた。
「ちゃんと、魂を込めるように1人の女の子、あるいは男の子を作ってあげたいんです。服から出ている顔や手足だけきれいであとはハリボテだったら、悲しい気持ちになりませんか?」
「ああ……。ええ、そうですね。本当にそう思います」
私は心底納得した。
男の子の人形でも、ちゃんと“ついてる”んですよ? 見ますか? と店長がニコリとしたが、それはあっさり断った。
けれどそのきっかけで、店長はビスクドールを作る工程を丁寧に教えてくれた。
粘土で原型を作り、そこから石膏で枠型を作るまで1~2週間。出来上がった枠型に液状粘土を流し込み、一時間後に開いて、低温で4時間焼く。
まだ柔らかさが残る間に眼球を入れる目をくりぬき、全体を丁寧に水洗い。
その後はじっくり高温で10時間程度焼き、ようやく陶器になるのだ。
その後も、納得のいく色を出すために何度も焼成を繰り返し、色付けしては焼き直し、パーツを組みグラスアイや髪や服を装着し、納品できる状態になるまでには、どんなに急いでも1か月はかかるらしい。
「大変な作業だ……。さっきちらっと値札を見ちゃいましたが、それだけの価値はありますよね」
私は無意識に人形の柔らかなブロンドを撫でながら、こぼすように続けた。
「私にも10歳の娘がいましてね。まあ、再婚の妻の連れ子なんですが、……その子が本当に懐かなくって。どんなに優しくしてやっても、私を毛虫か何かのように毛嫌いする。顔はね、この人形のように可愛らしいんだけど、こんな穏やかな表情を見たことが無くて。
何だろうなあ……。こんな事を言ったら店長さんたちに申し訳ないけど、ここの人形たちを見てたら、泣きたいくらい悲しくなっちゃうんです」
「それはお辛いですね。女の子は、心を通わせるのが難しいですから」
店長がやんわりと言った。
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