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捜索は朝まで続いた。
逃走者が森に逃げ込んでからというもののその時にはすでに日は暮れて捜索はかなり難航する羽目となったのだ。
一時中断を挟んでから再び捜索を開始してから十一時間。
「おい、あれを見ろ!」
捜索の隊員の一人が声を上げて仲間に伝える。
急な坂道を降りた先に一人の少女が横たわっていた。
それは間違いなく逃走者の少女だった。
全身傷だらけ、土ボコリに塗れていた。
「まさか、ここから落ちて」
それ以上は口にせず少女を見下ろした。
「いや、見てみろ」
その予想を否定するようにもう一人の隊員が少女の左手に注目する。
「手に持っているのは、キノコか?」
「あぁ、しかも少し齧ってある。よく見るとエリンギに似ているが、傘の外側が毒々しい色をしている恐らく毒キノコだ。これを食べてこうなってしまったのだろう」
「でも彼女、」
「あぁ、」
安らかな表情をしている。
それはまるで極上の美味を体験したような、そんな笑みを浮かべていた。
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