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ここまで私を苦しめてきた食べ物が、今私の命を繋ぎとめようと君臨しているのだ。
私が忌み嫌っていたにも関わらず、私に手を差し伸べてくれているのだ。
私はまた、涙を流した。
ありがとうとごめんね。
二つの感情が全く同じ質量、分量をもって涙を作る。
私は這い寄って、エリンギのところまで近づき、そして丁寧に摘み取った。
「美味しそう。なんて、美味しそうなの」
神々しささえ感じる。
私は心の底から「いただきます」と言って一言齧った。
瞬間、弾けるように味覚が私の空腹を満たし、生きているという実感を得る、なんてことはなく、むしろ解き放たれたように身体が軽くなり空気に溶け込むような感覚に襲われる。
「美味しい」
それはまさに天にも昇る心地だったのだ。
私は。
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