残りもの

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「……山本くんてニンジン平気?」 二、三歩歩いて振り返ったサクラさんの初めて見る苦いかお。 「え、う……ん?」 その可愛さにまともに返事なんて出来なかった。 「よかった! わたしニンジン嫌いなの……」 そう言ってサクラさんが僕の斜め前に座り込みニンジンだけを僕のカレーに移していく。 僕はその、カレーを混ぜてニンジンを探すサクラさんを茫然と見つめていた。 「うわ、三個もあった……よし、ごめんね」 そして、カレーのついたスプーンを口に入れスプーンを綺麗にしてから立ち上がり、今度こそ立ち去…… 「あ、もう一個あった。 ……いい?」 うん。ここまできて断るやつなんていないだろう。 「……よし。ありがとね、山本くん。 今度こそ……」 バイバイ。 そう口パクをして小さく手を振りサクラさんは友達のところへと戻って行った。 こうして食べることになったニンジン。 幼児の頃から食べていなかった久しぶりのニンジン。 幼稚園児の頃にに食べてから極力避けてきた数年ぶりのニンジン。 スパイスに負けないクセを残しつつも強くなくて、適度な甘味。 まさに極上と言える程に美味しかった。
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