0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れ様。ねぇ、カレー食べない? B組で余っちゃったみたいなんだけど……え? あ、そうなんだ。ありがと」
「お疲れ様。お腹空いてない? B組で余っちゃったみたいなんだけど食べてくれる?
うん、私も食べるよ。うん、ありがと」
さすがサクラさんだ。
近くにいたクラスメイトに配っていき、十皿くらいあったカレーはもう後二皿だ。
聞かれた相手が何か言ってたみたいだけど、僕の耳にはサクラさんの声しか聞こえない。
いや、聞こえても勝手に弾いてサクラさんの声だけを届けてくれる。
「……!」
やばい! サクラさんが近付いてくる!
僕は慌てて目を逸らした。
至近距離で見つめるなんて眩しくて出来やしないんだ。
いや、それよりも見てた事に気付かれたりしたらどう思われるかわからない。
……って、え、なんで?
他にも周りにクラスメイトはいるのになんで僕に向かって一直線なの?
え、まじ?
え、うそ……
「山本くん?」
……夢か。
これは夢だな。
疲れたせいできっと寝てしまったんだ。
「山本くんてカレー好き?」
「え、あ、……え?」
くそ! 夢なのにまともに返事すらできないのか僕は……。
「みんなが山本くんが欲しそうに見てたって言うだけど……良かったら食べてくれる?」
なんだと! 僕はサクラさんを見てたんだぞ!
カレーは別に好きじゃないし!
いや、いいか。
「……あ。うん、美味しいよ。最後になっちゃったしちょっと冷めちゃってるけど……要らない?」
「えと……じゃあもらっていいかな」
いや、味が心配とかそんな事じゃないんだけどね。
「うん!」
……可愛い。これが見られるならいくらでも食べられそうだよ。
「じゃあ、はい。あと少し、頑張ろうね」
サクラさんは笑顔を見せると、カレーを僕に手渡して友達のところへと戻って……
「……あ」
行かずに小さく声をあげその場で停止した。
最初のコメントを投稿しよう!