マッチ売りの少年

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「いやだ! いやだ! いやだーーーー!」 「七生、落ちつけ」 「いやだ! 触らないで! いやだ、本当はいや。抱かれるのはいや」 「わかったから。ほら、こうしているだけ」  身悶えるように暴れた七生の体は、加納の力に押さえ込まれて身じろぎも出来ない。だがそれは、無理やり押さえ込まれているのではなく、大きな真綿で包まれている柔らかさがあった。  抱かれているのだとわかった途端に体が硬直した。  体中の毛穴が嫌悪で詰まり、吐き出したくて吐き出せないどす黒い想いが胸の中で暴れまわる。父の声、言葉、体の重み、汗の感触、汚らわしい体液の臭い。  次々とフラッシュバックしては体を丸めて縮こまる。その体を加納が覆う。  これは誰。  行きずりの見知らぬ男。ついて来いといい、頭を撫でた。天使のように微笑んで、大丈夫だよと囁く男。 「ごめんなさい。ごめんなさい加納さん。親切にしてもらったのに」 「思い出させたのはおれだからね。悪かったよ、大人げなく君を探った」 「探った?」 「君が抱えている物はなんだろうとね、興味を持ったんだ。君の危うさは、おそらくこれからも君を危険にさせる。このまま手放してはおれも後味が悪い」  ふわっと抱きかかえられれば、逃げ出しようもなく縋りつくしかなく。 「とにかく寝よう。そこまでは君の仕事だ。いいね」
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