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「埼京」
「宇都宮!」
埼京は今日も今日とて遅延を出し、京浜に絞られたばかりだった。
「どうしたの?」
「30日間連続で遅延出したんでしょ?流石最強線だね」
「そっちだって最近人身多めじゃないの?」
珍しく一人(高崎と一緒じゃない)だからなにしにきたのかと思ったら、僕をからかいにきただけだったのか。
悔しくて少し言い返してみたけど、30日間連続で遅延を出したのは事実だし、それで今日絞られてたんだから、これ以上なにも言えない。
宇都宮は少し間をおいた後、口を開いた。
「まあね」
なにも言い返してこない宇都宮に拍子抜ける。
「どうしたの?宇都宮」
「なんでもないさ」
「そう、それならいいけど…」
そう僕が言った瞬間、居づらい静寂を宇都宮と僕の着信音が掻ききった。
ディスプレイを見たら、りんかいからだ。
「りんかい!どうしたの?」
「最近そっちも忙しかったんじゃないかと思ってね」
今からディナーでもどうかい?、そう誘ってきたりんかいに二つ返事ならぬ一つ返事で返した。
「行くっ!」
あちらも電話は終わったようだ。
「じゃあ、僕は尾久に行ってくるから」
「うん、じゃあね、宇都宮」
「また明日」
宇都宮は顔に穏やかな笑顔を浮かべていた。
きっと高崎と会うのだろう。
そう考えて僕は、りんかいとの待ち合わせの場所へ向かった。
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