第1章

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「埼京」 「宇都宮!」 埼京は今日も今日とて遅延を出し、京浜に絞られたばかりだった。 「どうしたの?」 「30日間連続で遅延出したんでしょ?流石最強線だね」 「そっちだって最近人身多めじゃないの?」 珍しく一人(高崎と一緒じゃない)だからなにしにきたのかと思ったら、僕をからかいにきただけだったのか。 悔しくて少し言い返してみたけど、30日間連続で遅延を出したのは事実だし、それで今日絞られてたんだから、これ以上なにも言えない。 宇都宮は少し間をおいた後、口を開いた。 「まあね」 なにも言い返してこない宇都宮に拍子抜ける。 「どうしたの?宇都宮」 「なんでもないさ」 「そう、それならいいけど…」 そう僕が言った瞬間、居づらい静寂を宇都宮と僕の着信音が掻ききった。 ディスプレイを見たら、りんかいからだ。 「りんかい!どうしたの?」 「最近そっちも忙しかったんじゃないかと思ってね」 今からディナーでもどうかい?、そう誘ってきたりんかいに二つ返事ならぬ一つ返事で返した。 「行くっ!」 あちらも電話は終わったようだ。 「じゃあ、僕は尾久に行ってくるから」 「うん、じゃあね、宇都宮」 「また明日」 宇都宮は顔に穏やかな笑顔を浮かべていた。 きっと高崎と会うのだろう。 そう考えて僕は、りんかいとの待ち合わせの場所へ向かった。
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