第52夜 ー難状ー

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 今日母親は仕事らしく、慌ただしく動いている。そんな中、用意されていた朝ご飯を食べ終え、のんびりとアイスティーを飲んでいた。  今朝も流れる殺人や死体発見のニュース。数の多い少ないはあれど、毎日よくもまぁ起こるものだと思う。  しかしその一部は、ナイトメア内で死んだ人間が含まれているのだから、複雑な気持ちにもなる。  昨夜の女性のニュースが流れなければいいなと思っていると、支度が出来た母親が息子の名を呼んだ。 「それじゃあ行ってくるわね。今日は1日だから、お昼は冷蔵庫の中の物食べて」 「分かった」  短い返事を聞いて、母親はリビングから出て行く。やがてバタンと玄関扉が閉まる音が鳴り、家の中はひとりとなった。  エアコンが利いた涼しい室内に、テレビの音だけが流れる。  最後のアイスティーを飲み干して、傍に置いてあったスマホを手に取った。  おやすみの会話で止まったままのLINE。すでに起床している神藤だが、おはようとまだ送っていなかった。  夏休み中の榊の朝はのんびりしている。ゆっくり寝ているみたいなので、送るのはいつも9時前頃。  今はまだ8時を過ぎたばかりなので、LINEではなくネットに繋ぐ。  昨日ある程度の目星は付けていたが、その中からひとりに絞り込むべく、もう何度目か分からないサイトのURLをタップした。  ずらりと紹介される、マリンちゃんグッズの数々。その中からある物をタップして、値段や商品の説明文を読む。  次にそれが売られている店の地図を確認して、ちらりとテレビに目を戻した。  時刻は8時半。そろそろかなと思うと、おはようとだけLINEを送る。  スマホからチャンネルに持ち替えテレビを消し、神藤はよしと呟いてから立ち上がった。
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