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ゆっくりと開いた目に映ったのは、毎朝見る景色。
驚いた神藤は、ガバッと飛び起きた。
――ここは、自分の部屋?
見慣れているはずの景色が、何処か信じられない。
神藤は辺りを見渡した後、何かを思い出し、慌てて腹に目を向けた。
「ない……」
服には血の染みがない。今度は服を捲り肌を見てみるが、やはり血どころか傷痕すらなかった。
「どうなってるんだ……? 確かに刺されたよな?」
刺された時の痛み。薄れていく意識。
あれは本物であった。嘘ではなかった。
だが腹にはその形跡はない。
神藤は大きな息を吐きながら、右手で顔を覆った。
斧を持った男に追われ、女に刺され、死にそうになったこと。
死んだと思ったのに、生きている。
やはり夢であったのだろうか?
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