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朝里は神藤を殺すつもりはなかった。
新人と言うことに同情し、だからこそ知っている範囲内のことを教えてやった。
それが餞(はなむけ)と言わんばかりに。
だが制限時間がやってきたことにより、事情は変わった。
同情した自分を恨み、話し掛けてきた神藤は憎しみに変わる。
誰かを殺さなければ自分が死ぬ。
制限時間が迫っている中、ゆっくり誰かを捜す暇などない。
と、なれば、答えは出たようなも。
――目の前の人間を殺せばいいのだ。
理性を失った朝里はただならぬ剣幕で、神藤にナイフを向けた。
「死ねえええぇぇぇぇ!」
狂った叫びを上げ、走り出す。
神藤は朝里に圧倒され動き出せず、その場に固まってしまった。
だがピタリと、目の前で動きが止まる。
泳いだ目で朝里を見つめれば、彼は恐怖に青ざめた顔をしていた。
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