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⑥のホームにあるベンチに座った神藤は、はぁとため息を付いて項垂れた。足の上に肘を付いて、頭をがしがしと掻く。そのまま額に手を置き、頭の中で分かったことを整理し始めた。
あれから通路に戻った神藤は、奥に歩みを進めた。途中また右側に階段があり、下りた先は③のホームがあった。
通路は1番奥で左に曲がっていて、曲がった先も長い道が伸びていた。最初歩いて来た通路と同じ、3ヶ所で下り階段が存在する。それぞれが④、⑤、⑥のホームであったことを確認した。
⑥ホームの階段から先の、長い通路は行き止まりになっていた。ここで "Π" の形が、3本ずつ枝分かれした構造だと分かる。
しかしホームはあるものの、券売機や改札はない。それらに繋がる道や、学校エリアのように階段が隠されていることも考慮したが、何処にもなかった。
これで地下鉄エリアを把握出来たのに、神藤の表情は晴れることなく曇っている。むしろ酷く思い詰めたように困っているのには、全体の狭さが原因だった。
目覚めてからここに来るまでに、結構な時間を有したはずである。今の時刻は分からないが、慎重に探索したので、それなりの時間が経っているだろう。
それなのに――。
今まで一度も、他の登録者と出会っていない。
それどころか人の気配すら感じられなかった。
ただ気付かなかっただけかとも思ったが、それは思い当たらなかった。初めての場所だからこそ、いつも以上に気を張っていた。
それ故に疲労はすでに大きい。だがそんなことはどうでもいいと、神藤は額に置く手で目を覆った。
狭いエリアだから、ここからスタートする登録者は少ないのだろうか? 地下エリアからのスタートはめったにないと、羅井は以前言っていたが……。
だからと言って少な過ぎる。
ここには自分しかいないのでは? とそんな錯覚すら覚える程だが、さすがにそれはないと考え直す。
では、一体何処で身を潜めているのか?
検討すら付かず、温存しておきたかったストックも減らす意を固める。
焦りよりも困惑の方が勝る神藤は、しばらくこの場から動き出せずにいた。
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