第51夜 ー穴蔵ー

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 チャクラムと呼ばれる投擲武器のひとつ。刃の付いたドーナツ状の輪っかを投げて攻撃する。別名円月輪とも呼ばれ、投擲武器では珍しい "斬る" ことを目的とされている。  実際に存在する武器らしいが、漫画やファンタジーの中でも余り見掛けることはないかも知れない。  そんなマイナー武器のことを神藤は知っていた。  知っていたことと、攻撃されるまでの余裕があったので、向かってきた輪を躱すことが出来た。  輪は繋がっている糸によって、ブーメランのように女性の手元に戻っていく。  ファンタジーでは手元に戻ることが当たり前になっているが、本来戻ることはないらしい。まぁよく考えれば例え戻ってきたとしても、鋭利な刃を掴み取ることは難しいだろう。  しかし女性は、わざわざ糸で返ってくるようにしてある。  それを可能にしているのは、グローブがただの革製ではなく、防刃手袋だったからだ。  戻ってきた輪を掴んだ女性は、ちっと舌打ちを吐き出したような表情をする。すぐに次を投げようとしたが、驚きに目を見開いた。  躱した後に、神藤は走り出していた。輪が糸で繋がっていると分かっていた以上、次の攻撃までにインターバルが発生する――。  その隙を狙って奇襲を仕掛けた。  思惑通り輪が手元に戻った頃には、攻撃間合いまで詰め寄れることが出来た。  ――もらった。  思わずにやりと笑い、大きく剣を振りかぶった。  首元から胸に走る一太刀をイメージする。  だが今度、神藤が目を見開くこととなった。 「ギィン!」  ホームに響く金属音。握る輪で一振りを受け止めた女性。そのまま曲線を利用してうまく去なすと、ガラ空きとなった神藤の脇腹に蹴りを入れた。 「ぐっ……!」  防御は間に合わず、もろにくらう。女性の割には強い蹴りに、顔を顰めながらよろめいた。  変わった武器からマイ武器であることは明白。さすがレベル50まで到達しただけあって、戦い慣れている。  ――あぁ、面倒だな。  愚痴を心の中で呟き、顔を正面に戻せば、飛ばされた輪がもう目の前に迫っていた。 「なっ!?」  反射的に躱すが、頬を斬られる。このままでは状況が不利だと考えた神藤は、一旦体勢を整える為、この場を離れることにした。  勢いよく回転する輪が女性に戻っていく。その隙に背後の階段を駆け上がった。
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