第52夜 ー難状ー

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 意識の遠いところで、リズム良く鳴る音が聞こえる。何か夢を見ていた気がしていたが目が覚めた。  神藤は静かに手を伸ばし、枕元にある携帯の画面をタップする。鳴り続けていたアラームを止め、正面を向いた。  いつの間にかタイムリミットがきたんだなと、白い天井を見つめながらぼんやり思う。  あれから数分後に現実に戻ったのだが、いつその時がきたのか分からなかった。  意識はハッキリと覚醒していたはず。しかし色々思うところもあり、体力的にも精神的にも憔悴していたようだ。  それが無意識のような状態を作り、起きてもいまいち実感が沸かなかった。  ただ今日は目覚めが悪い。怪我の痛みや筋肉痛はもちろん感じられないが、寝た気は全くしない。体のだるさとやる気が起こらず、二度寝しようと目を閉じた。  夏休みだから時間を気にする必要はない。何処かに出掛ける用事も予定もなければ、尚のこと。  だがどんなに試みようとも寝れる気配がしない。心苦しいような長い時間に耐え兼ねて目を開けば、時間は5分と経っていなかった。 「ダメだ……」  独りごちて、ゆっくり起き上がる。カーテンを開いて室内に明かりを取り入れてから、ベッドから下りた。  寝ようにも眠れない。頭は完全に目覚めてしまっているようで、仕方なく起きることにした。  気怠げに目を擦ってから部屋を出て行く。  リビングからの生活音を聞きながら、神藤は今日1日をどう過ごそうか、ぼんやりと考え始めた。
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