第57夜 ー与貰ー

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◇ ◇  体育館でそれぞれの闘いに決着が付いた頃より、時は遡る――。  他にも決着が付かんとする場所があり、それが羅井と将馬の闘いである。  アイテム『影縫い』により、武器の使用を封じられた将馬。それを好機と攻め立てる羅井が圧倒的に有利で、止めの一撃が心臓を貫こうとした――。  しかし鋼の音が響き、貫くはずの切っ先は硬い物に当たって止まった。 「なっ!?」  羅井が驚愕に目を見張る。それもそのはず。使えなくなっていた武器が、彼の手元に戻っていたからだ。  長い刀身は突きを防ぎ、将馬はしてやったりとにやりと笑った。  驚きに動きが止まっているところに、将馬は蹴りを入れる。隙を突かれ、羅井は腹に痛い蹴りをもらった。  ぐぅ……と顔を顰め、よたよたと後ろに下がる。黒い影が視界の中で走ったのに気付き、急いで顔を上げれば、薄刃が振り下ろされていた。 「ちっ……!」  剣での防御は間に合わないと判断し、羅井は自らの手で掴み取った。  柔らかな刃は紐のように簡単に掴むことが出来た。しかし剃刀のように鋭い両刃は、羅井の手の平を斬り裂く。  強く握り締めたことにより、深い切創はぽたぽたと鮮血を流す。それでも羅井に放す素振りはなく、それどころか引き寄せようとするので、将馬は一旦刃を自分の元に戻した。  羅井に一泡吹かせることが出来た将馬は、満足気な顔をする。その気持ちが外にも零れ、ふふふと笑い声となった。 「間に合わないかと思いましたけど、間一髪、時間がきてくれて助かりました」 「……効果時間計ってたんか?」 「はい。俺もこの世界に来て長いんでね。それなりに色々知ってるつもりですよ? 『影縫い』の効果の持続時間とか」  にこっと微笑んで、将馬は話を続ける。 「『影縫い』の効果時間は15分。でもそれはあくまでも4本全てが刺さった場合。さっき、俺の武器の影に刺さったのは2本だったから、単純に効果時間は半減される。でしょ?」 「せやな」  にこにこと笑ってされた問い掛けに答えたが、羅井には引っ掛かることがあった。  将馬が効果時間を知っていようが、知らまいが、そんなことはどうでもいい。むしろ将馬ならば知っていて当然だろう。  問題はそこではない。  将馬が効果時間を完璧に把握したと言うことが、どうしても腑に落ちなかった。 「半分になった時間、7分30秒を寸分の狂いもなしに分かったって言いたいん?」 「そうです。俺、目を閉じて完璧に、ストップウォッチを01:00. 00に止めれるんで」 「……お前の体内時計凄過ぎやろ」  にかっと笑い答えた将馬に対し、羅井は呆れながら言う。皮肉のつもりが相手は褒め言葉と捉え、そんなことないですよ~と照れ出した。  だが実際に将馬の時間感覚は、人並み優れたものである。ただじっと刻まれる時間に集中していれば7分30秒、つまり450秒を計れるかも知れないが、将馬の場合は羅井と闘いながらそれを行った。  時間だけでなく、攻撃や防御、引いては羅井の動きを読む必要もあった。そんな闘いの中で、正確に450秒を計れた。そう言う点でも、将馬が人より身体能力が抜きん出ているのが分かる。
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