最高のごちそう

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「ヒナ、お願いだ。Yesと言ってくれ。俺のダメなところは直すから」 縋るような目で見つめられて居たたまれなくなる。そんな風に言ってもらえるような人間じゃないのに。 「ハルにダメなところなんてないよ」 「その……過去はどうやっても変えられないから。……でも、プロポーズしたのはヒナだけだよ。結婚を意識したのはヒナだけなんだ」 ハルの歯切れの悪さに、逆にどれだけの女性たちと付き合ってきたんだろうと勘繰ってしまうけど。 でも、それを今更変えられないのは私だってわかっている。 「そうじゃないの、ハル。私がダメなの。こんな私じゃハルの奥さんにはなれないよ」 私だって努力はしてきた。その甲斐あってか、ハルと出会ってからは色々な人に「綺麗になった」と褒められるようにもなった。 ずっとおしゃれに無頓着だったけど、だいぶマシにはなってきたはず。 でも、高砂の席でハルの隣に胸を張って座れるかと聞かれたら、滅相もないと答えるだろう。 「だから! なんで⁉ ”こんな私”ってどんな私?」 途方に暮れたようにハルが尋ねた。 「仕事だって半人前で、毎日部長に睨まれてるし。自分の部屋も片づけられなくて、お母さんにも怒られてばかりだし。料理だって、さっきみたいな簡単なものしか作れないもん。今の私じゃ、3日でハルに捨てられるのがオチだと思う。だから、3年ぐらい待ってくれる? お料理教室に通うから」 「3年?」 唖然とした様子のハルの口から、ため息のような言葉が零れた。 「ずっと一緒にいたい」と言ってくれたから、3年ぐらいは待ってくれるかと思ったんだけど、どうやら無理みたいだ。 「あー、ごめん! 今のは忘れて。というか……」 ブワッと涙が溢れてきて、ハルに見られないように慌てて俯いた。 「ごめん……なさい……というか、今までありがと。じゃ、さよなら!」 「え⁉ ヒナ⁉」 ハルの驚く声を背中に聞きながら、私はハルの家を飛び出していた。
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