最高のごちそう

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自慢じゃないけど、足には自信がある。 今日はフェミニンなミニワンピにちょっとヒールの高いパンプス。 でも、そんなのものともせずに駅までダッシュした。 なんで、こうなっちゃったんだろう。 ハルに手料理を食べてもらって幸せだったのに。 あの指輪、返品できるのかな? 高かっただろうに悪いことしちゃったな。 そんなことを考えながら、とにかく走った。 走ってないと、泣き叫んでしまいそうだったから。 駅前のロータリーが見えてきて、美味しそうなパン屋さんも見えた。 今朝、この駅で初めて降りたときは、今度、あのパン屋さんに行ってみようなんて思っていたのに。 きっと、もうここには二度と来ない。 もう、ハルには二度と会えないんだ。 私が走るのをやめたのは、ロータリーの手前の小さな公園の横。 幸せそうな親子連れが遊んでいて、小さな子どもたちにぶつかったら大変だと思ったから。 思えばハルと私の出会いは、駅構内を走っていた私がハルにぶつかったことがきっかけだった。 「ヒナ‼」 いつの間に追いつかれていたんだろう。ハルが追いかけてきたのも気づかなかった。 バシッとハルに手首を掴まれた。 「相変わらず足が速いな。でも、捕まえた。もう逃がさない。”さよなら”って何? 愛し合ってるのに、別れるのか?」 「だって! ハルは待っててくれないんでしょ?」 「うん、3年も待てない。今すぐヒナと一緒になりたいんだ。待つ必要なんてないだろ? 俺は今のままのヒナが好きなんだから」 「3日で捨てられちゃうよ……」 「捨てるもんか! ヒナの手料理、すごく旨かったよ。でも、たとえ料理が全く作れなくても、俺はヒナと一緒にいたい。お互いを思いやって助け合えれば、それでいいよ。ヒナがいてくれれば、他には何にもいらない。ヒナはそうじゃない?」 「私も。ハルがいてくれればいい。ハルがいなきゃダメだよ」 別れるなんて、やっぱり無理。 ハルのいない人生なんて考えられない。
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