163人が本棚に入れています
本棚に追加
「言い訳じゃないけど」
いや、まさにこれから私は言い訳しようとしているんだけどね。
「環境って大きいと思うの。ほら、うちってお姉ちゃんがいるじゃない? でもって、去年死んじゃったけど、おばあちゃんもずっと同居してたし」
私の話の行方が掴めないみたいで、ハルが「ん?」と首を傾げた。
「つまりね。狭いキッチンに女が3人立ってたら、4人目はもういらないでしょ? だから、私はいつもお父さんと一緒に、料理が出来上がるのを待つ人だったわけ」
「ああ、そういうこと。大丈夫。ヒナが料理上手だなんて最初から期待してないから」
ニッコリと優しく微笑んだハルは、私にプレッシャーを与えまいとしてくれてるのかもしれないけど。
随分、失礼なことを言われている気がするのは、私の気のせいかな。
ハルの家の合鍵を失くしたお詫びに何かしたいと言ったら、「ヒナの手料理をごちそうして」とリクエストされた。
ハルに料理を作ったことはある。
初めて作ったのはロールキャベツだった。
別にハルの大好物というわけではなく、私の得意料理というわけでもない。
それなのに作ろうと思ったのは、手が込んでいるように思えたから。
不器用な私はキャベツを綺麗に広げることすら出来なくて、結局は母にほとんど作ってもらう羽目になった。
「お母さんが8割ぐらい手伝ってくれた」
そう言いながら保存容器の中のロールキャベツを見せると、ハルは涙を浮かべて喜んでくれた。
ピクニックのお弁当に卵焼きとブロッコリーのからし和えを作ったこともある。
他のおかずは母の手作りだったけど。
そう考えると、私が100パーセント手作りする食事というのは、これが初めてかも。
ハルの目の前で料理するのも。
最初のコメントを投稿しよう!