料理と言えるのかな

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スーパーの袋をぶら下げて、ハルのマンションにお邪魔した。 独り暮らしのハルの家に来るのは初めてだけど、キョロキョロしている暇はない。 しっかり手を洗って、エプロンをつけて、すぐにキッチンに立った。 何がどこにあるか全然わからないから、いちいちハルに聞いて。 そのせいか、ハルも落ち着かない様子で私の後ろをウロウロしている。 「ハル? もういいから、あっちで座って待ってて」 リビングを指さしてそう言うと、ハルは静かに首を振った。 「ヒナが料理してるところを近くで見ていたいんだ。いいだろ?」 このセリフだけ聞くと、甘々の彼氏が片時も彼女のそばを離れたくなくて言っているように聞こえるけど、ハルの場合は違う。 さっきから、私が包丁を持つたびに「あっ!」とか言うし。鍋を持つたびに、「わっ!」とか叫ぶし。 要するに、慣れない私が火傷したり包丁で指を切ったりすることを心配しているんだ。 なんだか子ども扱いされてるようで悔しい。 今日のメニューは白いご飯に、豆腐とわかめのお味噌汁。 ほうれん草の胡麻和えに、鱈のバター焼き。 ハルは鱈のバター焼きを食べたことがないそうで、興味津々といった様子で見ている。 フライパンを弱火で温めて、バターを投入。 フライパンの底に満遍なくバターが行き渡ったところで、甘塩鱈の切り身を2切れ並べた。 「味付けは?」 「何にも」 「え?」 「何にもしないの。ただ焼くだけ」 不思議そうにフライパンを覗いているハルの横で、私は洗い物を始めた。胡麻和えに使ったザルやボールなどを洗ってから、フライパンの鱈を観察。 火が通って下の方が白くなったのを確認してから、フライ返しでひっくり返そうとした。 私のぎこちない手つきが不安なのか、ハルは水道の蛇口をひねった。 「何?」 「いや。ヒナが火傷したら、すぐに冷やせるようにと思って」 もう。過保護なんだから。 私は鱈をちゃんとひっくり返して、フライパンに蓋をした。 ほっとしたように小さく息を吐いたハルが水を止めた。 「ハル、心配しすぎ」 「うん。俺、きっと毎日早く帰ってきて、ヒナを見てないとダメだ」 「毎日?」 ハルの言った意味がわからなくて尋ねると、ハルはハッとした顔をして首を振った。 「何でもない」
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