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「ヒナの手料理、全部旨かったよ。洗い物は俺がやるから」
食べ終わって片付けようとした私に、ハルも立ち上がって声をかけてきた。
正直、慣れないことをして疲れたから、ハルの申し出はありがたかったけど首を横に振った。
「ううん。後片付けまでが料理だから、最後までちゃんとやる」
「じゃあ2人でやろう。そばで見てないと、ヒナが皿を割って手を切るんじゃないかって気が気じゃない」
「私、そんなにドジじゃないよ!」
口を尖らせると、ハハッと笑ったハルが唇を合わせてきた。
「んん……」
わわわ。大人のキスだ。
ハルと初めてキスしたのは3か月前。
それからは会うたびにキスをするようになったけど、大人のキスはしたことがなかった。
ハルの舌が生き物のように私の口の中を動き回る。
痺れるような快感を感じるのに、心のどこかで冷めた自分がいる。
やっぱりハルは慣れてるんだな、と。
十人並みの顔の私は、性格もがさつだからモテた試しがない。
それに対してハルはデート中もモテまくりで、トイレに行ったりしてちょっとでも私が離れると女性から声をかけられる。
チャラチャラした人ではないから、モテるからと言って女の子をとっかえひっかえなんかはして来なかっただろうけど。
それでもやっぱり、年相応の女性経験は積んできたんだろうなと思うと、胸がモヤモヤする。
ハルの身体をちょっと強く押すと、2人の唇は容易く離れた。
「えっと。そろそろ帰るね」
「え⁉」
ハルの顔に浮かんだのは後悔と焦りと傷ついたような表情。
私はそれに気づかないふりをして呟くように言い訳を零した。
「あんまり遅くなると、変に疑われちゃうし」
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