始発

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開け放った窓から、ふわりと爽やかな風が入ってきた。 レースのカーテンが膨らみ、裾がゆらゆらと揺れる。 先日まで厳しかった残暑も影を潜め、爽やかな空気が辺りをさわりと撫でている。 秋晴れの空は抜けるように青い。 ガタン、ゴトンという音が遠くからやってくる。 ーーもう、四時やろか。 壁に掛けてある文字盤の大きな時計を見上げると、四時の十分ほど前だった。 ーーそろそろ夕飯の支度を始めなあかんね。 キキーーー 寂れた音が響いた。その後一息おいて、大きく息を吐くような音も。 ーーそういえば、もう随分と乗ってないねぇ。 廃線の話が出たのは、一昨年だったか。 近隣の高校や住民に反対でなんとか廃線は免れたものの、切符の値段は上がり、特に定期はぐんと高くなったと娘がぼやいていた。 ーーそれでも残ってくれてよかった。 それほど田舎すぎる所ではないけれど、街からは少し離れたこの地域を街と繋いでくれる、パステルカラーの鉄道。 今から何十年も前から変わらぬ狭い線路のおかげで、普通の幅の車両は通れず、開通以来の古い車両が外装こそ替わりはすれども、今も働いている。
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