第1話

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す! この孫の手の突起部分を上にした状態で床に置き、そこに仰向けで寝そべるだけです! ちょー簡単!  人は気力、体力、精力さえあれば乗り越えられない問題などないのです!」 「あの…… それ一つ貰おうかしら?」 「サンキュー、ママ」 ニトロが順調に商品を売りさばいていると、 「ちょっとキミぃ! ちゃんと許可取って商売やってんのぉ?」 紺色の制服を着た地方公務員が話しかけてきた。 「いやいや、これは商売じゃないですよ!」 「そんなこと言ったって、この箱にちゃんとお金が入ってるじゃないかぁ!」 「お巡りさん、この箱をよく見てみなさい!」 箱を見ると〝募金箱〟と書かれている。 「ぼっ、募金箱だとぉ!」 「そうでーーす! この商品はお客さんに売っているのではなく、プレゼントしているのでーーす!」 「でも、ここに商品の値段が書いた張り紙がしてあるじゃないか!」 「あぁこれね、お巡りさん…… この紙をよく見てごらんなさい」 紙を見ると、〝参考価格として、◯◯円です〟と書かれてある。 「なんだよ! 参考価格って! しらじらしいなぁ!」 「いくら募金したらいいか分からないお客さんの為に、こちら側から参考金額を提示してあげているのでーー す」 「ちょっと! アンタ邪魔よ! どきなさい! 私の息子が、アル中硬化大学に入学してしまったらどうするの よ!」 台の前に立ちはだかる地方公務員を払いのけて品物を受け取り、募金箱にお金を投入する中年女性。 「あっ! お巡りさーーん!アソコのハゲオヤジ、なんか悪いことやらかしそうな顔してるよ! JKとハゲオ ヤジが並んで歩いているよーー!」 ニトロは交差点を指差しながら言う。 「ふんっ! 勝手にしやがれ!」 そして自転車で去っていく国家公務員に中指を立てていると、 「あの…… ちょっといいですか?」 「ん? 次はなんや?」 その呼び声に振り向くと、 「ぼっ、僕を弟子にしてください!」 「え? なんて?」 「だから…… 僕を弟子にしてください!」 「からの?」 「えっ…… からのって?」 「おいっ、兄ちゃん!」 「はい……?」 「職業は?」 「ライフプランナーをやってます!」 「えっ、なにそれ?」 「保険商材を用いてお客さんが安心できる人生を設計する仕事です。わかりやすくいうと保険営業マンです ね!」
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