第1話

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「例えばやで? 初対面のお客さんに対していきなり〝我が社の保険に加入してください!〟ってストレートに お願いするかい?」 「いえっ…… そんなことは……」 「キミの嫌いな食べ物はなぁに?」 「ニンジンです」 「OK! 自宅はこの近所かい?」 「はい、まぁ近いですけど」 「それでは、今から〝おーでしょん〟を始めます!」 「おーでしょん? オーディションのことですか?」 「それそれ! では、これからキミの自宅にでも行こうか!」 「でも僕…… 実家ですよ?」 「実家で結構、ケッコー、柴咲コウって感じやわ」 「わかりました」 ニトロは品物を片付けながら、客衆に向かって閉店アナウンスをする。 「えぇ、本日のMCニトロ店(テン)SHOWはこれにて終了でございます。 またのお越しをお待ちしており ます」 片付けが終わると、品物が入った段ボールを指差しながら、 「なぁ、これ〝落し物です〟って言ってそこの交番に届けてくれへん?」 「えぇ! どうしてですか?」 「だってこの荷物をキミの家まで運ぶの面倒くさいやん。 だから、ポリスメンに預かって貰おうと思って。  あっ、これもおーでしょんの審査に入ってるかもしれへんでぇ」 不気味な笑みを浮かべながら言う。 「わ、わかりました……」 そして、交番に荷物を届けた後、 「キミ、名前は?」 「武井浩輝(タケイヒロキ)と申します」 「OK、ヒロキやな。 俺はブラッド・ピットが好きやから周りからはジョニー・デップと呼ばれている! だ からニトロって呼んでくれ!」 「……は、はい」 「なんやねん、オマエは! もうちょっとリアクションせぇや! そういうところ特に審査に響くからな!」 「はい! すいません!」 「もう戦いは始まっとるんやで! 今日は何曜日やったっけ?」 「金曜日です!」 「決戦は金曜日なんやで!」 「……は、はい」 「だから、リアクションせぇっちゅうねん! 今のはドリカムボケでしょうが! そういうところやぞ?」 その二十分後?? 二人はファミリーマンションへ到着した。 浩輝の自宅はその十階だった。 「おっ、なかなかええトコ住んでるやんかー! そういえば、ヒロキって何人家族なん?」 「祖母と両親、姉の五人家族です」 「へぇ、他の家族は今、家におらんの?」 「祖母は具合が悪くて部屋で寝込んでいます。 両親は二人とも知人のお葬式で海外へ行っているのでおそらく
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