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岡村が加奈の視線の先をちょっと見て、
「まあ、気にしないで片付けちゃおうか」
と、加奈の肩を叩いた。
加奈は頷いたけれど、叩かれた肩がじんと重く感じる。
岡村を誘導するために先を歩きながら、触らないでくれれば、気にするような事態にはならないと思うのに、と岡村を小さく呪う。
大きな店舗の端にある、巨大なラックの前で立ち止まって、パレットと呼ばれる板に乗った、組み立てる前の状態で箱に収納された椅子を見下ろす。
「私が持ち上げるので、脚立の上から受け取って、そこの上に乗せてください」
加奈が言うと、岡村が腕まくりをしながら「はいよ」と、歯を見せて返事を返した。
脚立に上りながら「柳さんって力なさそうに見えて、結構あるよね」と、岡村が言う。
「毎日、こういうことやってたら自然とつきます」
加奈は既に大きな段ボールを抱えて、待って居た。
伸ばされた手に、持っていた段ボールを上げると、岡村がそれを棚に積んでいく。
杵と臼でする餅つきの様に、加奈が上げては、岡村が受け取り、積む。
それを黙々と繰り返す。
「柳さんさ、今度の飲み会行かないの?」
加奈が見上げると、流石に重労働なので、岡村の顔が紅潮していているのが見えた。
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