日常

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「私は、そんなに余裕ないんで、いきません」 そう言いながら、次の椅子の箱を持ち上げる。 「お金かぁ。ここの社員試験受けるつもりなんでしょ?」 「そのつもりですけど、狭き門ですよね。これ、お願いします」 ああ、はいよと、岡村は箱を受け取ると、ぐっと力を入れて持ち上げて、どさっと新しい山に積んだ。 「俺、出来るだけ柳さん推してあげるから」 岡村の言葉に、一瞬手が止まったが、すぐに気を取り直して、加奈は段ボール箱を岡村に渡す。 「お気持ちだけで大丈夫ですから」 加奈は本当に、心からそう思っている。 余計なことはしないでほしいと、願っている。 誰かに口添えしてもらうようなズルをしたくない。 「言うだけ、言うだけ。俺、本気で柳さんに受かって欲しいし」 最後の箱を持ち上げながら、加奈は岡村を見上げる。 「大林さんも、受けるらしいですよ? 私はいいですから、大林さん応援してあげてください」 そして、箱を持ち上げると、岡村はにんまりしながらそれを受けとる。 「柳さんってやきもち妬いたりするんだね」 「え?」 「よし、この箱ラスト! 終わり!」 岡村は脚立から降りて来て、手をパンパンと叩いて、埃を払った。
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