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「愛奈はどこの大学狙ってるの?」
帰り道で八重がいつになく真剣な表情になる。
「どうしたの?急に....」
「いや、愛奈ってあたしと違って頭良いじゃん?医学部とか?いや、愛奈は正義感強いから弁護士とか似合いそうだし」
おいおい....
「私は大学には行かないよ」
その返事に八重の足が止まる。
「な、なんでっ!?」
「何でって言われても....うち、そんな余裕ないし、2年間だけ何か資格取れる学校へ行こうかと思ってる」
「そっか....何かもったいないなぁ」
そう言われても。
「それに早くおばあちゃんに楽させてあげたいからね....ええっ!?」
八重が抱きついてきた!
「ちょちょちょっ!どうしたのっ!?」
「だっでばなっだらえらいがらっ!」
泣いてる....
「ほら、泣かないの」
鞄からティッシュを出して渡すと、八重は人目を憚らずにチーンっ!と鼻をかんだ。
目も真っ赤だ。
八重が嗚咽混じりに何か訴えていたが、何を言ってるのかは分からなかった。
でも、その優しさだけは十分に受け止めたよ、八重。
「ごめん、愛奈....」
八重が落ち着いて来たので、またバス停に向かい歩き始めた時、遠くから爆音が聞こえて来た。
「何?バイク?」
振り返る八重に合わせて見ると、遠くから数台のバイクが蛇行しながら走ってきた。
「やだ、暴走族だ」
一瞬にして沈む私。
兄の顔が浮かぶ。
10台くらいのバイクがだんだんこっちに近づいて来た。
ちょうど下校時間、学生が大勢歩く歩道ギリギリまで寄せながら空吹かしを繰り返している。
「何か怖いな」
八重が私の腕を強く掴む。
私たちの10メートルくらい手前で急に暴走族が止まった。
歩道の男子に向かい何か叫んでいる。
それに対し、完全に怯えた様子の男子と、その周辺から離れる学生たち。
「あ、あれ孝太郎じゃない?」
八重に言われて見ると確かに孝太郎。
「あいつ、また何かつまんない事を言ったか暴走族相手に睨んだりしたんじゃない?」
確かに孝太郎は一言多い。
見栄も張る。
「あ、でもヤバくない?あんなに大勢にやられたら怪我じゃ済まないよ?せ、先生呼んで、いや、け、け、警察呼ぶ?」
八重が慌ててスマホを出す。
暴走族の1人が孝太郎の胸を掴んで大声で脅し始めた。
嫌だ!暴走族なんてっ!
その時、別のバイクが3台近づいて来た。
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